林業のしごと
樹木も、野菜や稲などの畑作農業と同じように、種を蒔き、苗を植え、肥料を与えたり除草を行ないながら育てられます。畑作農業では、その年の夏から秋にかけて半年程度で収穫できますが、木は収穫されるまでに、40年から60年という年月が必要です。
育苗
1種採り
丈夫で強い苗を作るにはまず、優秀な遺伝子を持つ種を選ぶことからはじまります。樹木の種は、採種園に植えている性質の良い種採り用の母樹や、天然林から採取します。
マツの種は松かさから採取。松かさごと集めて乾燥させ、鱗片の裏にある種を採ります。
2種まき
温度や湿度など厳正に管理された種を、秋・春にまきつけを行ないます。また、優良種によって生育された台木から挿し木によって苗木を増殖するマイクロカッティングという方法も導入しています。
播種床に藁(わら)を敷くことで、病害を防ぎ、芽の生育を促すことができます。
3床替え
苗木を畑からいったん掘り取って、植え直す作業を行ないます。これにより根の成長を促し、強い根に育てあげ、また、斉一な規格に育てます。
均等の幅で畝を作った畑。植え直す「床替え」を行うことで、丈夫な苗木が育ちます。
4掘り取り
生育した苗木を畑から収穫します。この時点で病害虫等で弱っていたり、生育が悪く規格に達していない苗とを分ける選苗を行ないます。
専用の機械で苗木を掘り起こした後、人の手によって収穫・選別を行ないます。
5出荷
傷めないように荷造りし、選苗した苗木を輸送します。
カビや菌の繁殖を防ぐため、収穫した苗木の根を特殊な溶液につけ、出荷します。
造林
1地ごしらえ
山間に苗木を植えるための畑をつくる作業です。苗木の生育環境をよくするため、雑草などを取り除き、伐採した木や枝などを片づけて生育環境を良くします。
地ごしらえには、ネズミや鹿などによる苗木の食害を防ぐ効果もあります。
2植栽
山の斜面に手作業で苗木を1本ずつ植えていきます。根がしっかりとつくように、土を柔らかくほぐして苗を丁寧に植えます。
伐採する時の作業効率なども考慮した上で、適度な間隔をあけて苗木を植えていきます。
3下刈り・枝打ち・間伐
苗木の成長を妨げる植物の除去や木の間引きを行なうことで適度な間隔を保ち、材料に適した樹木に育てます。また、枝打ちをすることで、加工した時に表面に節の少ない木材になります。
木を間引き、下草を刈ることで、太陽光が木の根本や地面まで十分に届く環境を作ります。
4伐採
柱や板の材料として十分な太さに成長し、収穫時期を迎えた樹木を伐採します。
伐採できる程度にまで木が成長するには、植栽から50年前後の長い歳月を要します。